行政書士のための「融資講座」【その2 融資の種類1】
こんにちは。 Ichigo(一期)行政書士事務所の引地です。
前回は、「創業融資と一般融資の違い」、「一般融資の特徴」につい
てお話ししましたが、今回は融資の種類にはどんなものがあるかにつ
いてご説明します。
それぞれの融資の種類を知ることにより、依頼者に対しても幅のある
提案をすることができるようになりますので、ぜひ、ご参照ください。
融資の種類
融資は、「形式的」な面から見た場合と「資金使途」から見た場合の
大きく2つに分類することができます。
このうち今回は「形式的な面からみた場合の区分」についてご説明し
ます。
融資は、これを形式的な面からみた場合、次の4つに分類することが
できます。
1 手形割引
2 手形貸付
3 証書貸付
4 当座貸越
1.手形割引
手形割引とは、他の会社から支払いのために受け取った手形を金融機
関に一時的に買い取ってもらうことにより、その額面に見合った金額
の融資を受けるというタイプの貸付方法をいいます。
手形割引では、金融機関が持ち込まれた手形に裏書をしたうえで、一
定の手数料を差し引いた金額を申込人の口座に入金するというのが一
般的な流れとなります。
なお、返済は、その手形の満期日(これを過ぎると現金化できる)以
降に、金融機関が手形の振出人に対し取り立てをすることにより行い
ます。
返済が完了した場合には、手形は本人に返却されます。
手形割引の特徴としては
➀ 他の融資に比べて、審査機関が短く、審査が簡単な場合が多い。
➁ 返済期間は半年以内が多く、手形の満期日以降に一括返済。
➂ 手形の内容(上場企業か、中小企業か?、手形の支払いの満期日
はいつか?など)や金融機関の規模などで、割引料が変わる。
例) 都市銀行:1.5~3.0% 地方銀行:2.0~3.5%
信用金庫:2.5~4.0% 信用組合:3.5~5.0%
④ いくらでも割引できるわけではなく、その申込人の信用力に応じ
た限度額(割引限度枠)が設定されるのが一般的。
などとなっています。
なお、手形割引で注意しなければならないのが、「手形の買い取り義
務の存在」です。
手形割引を金融機関にお願いした際に、手形の振出人が倒産したり、
支払いができずその手形が不渡りとなってしまうと、手形割引の申込
人は金融機関に対しその手形の支払い(手形の買戻し)をしなければ
ならなくなります。
これを「手形の買い取り義務」といいます。
したがって、あまり有料でない企業の割引を大量に行っている場合に
は、その分割引手数料が高くなるだけでなく、振出人が倒産した場合
のリスクも高まることになります。
2.手形貸付
手形貸付とは、融資の申込人が金融機関に対して手形を振り出すこと
により資金の調達をする方法をいいます。
手形割引が、申込人が他の会社から振り出された手形を使うのに対し、
手形貸付では、金融機関が持つ専用の手形を使い(金融機関に対し)
手形を直接振り出すところに違いがあります。
手形貸付の特徴としては
➀ 1年以内の短期貸し付けで利用される。
➁ 返済方法は、利息額を先に支払ったうえで、元金については指定
された日に一括返済。
➂ 証書貸付よりも簡単な手続きと審査で行うことができる。
などがあります。
このような特徴があることから、商品を仕入れて販売するまでや、商
品を販売した売掛金が入金されるまでといった、短期間の資金調達に
利用されるのが一般的です。
なお、手形貸付は金融機関が手形を振り出して行うものであるため、
もし、返済日までに返済ができない場合には、通常の手形と同様、2
回の支払い不能により取引停止処分となります。
3.証書貸付
証書貸付とは、金融機関と融資の申込人との間で金銭消費貸借の契約
書を交わしたうえで融資をするタイプの貸付方法をいいます。
証書貸付の特徴は
➀ 返済期間が1年以上の長期の場合や、融資額が比較的大きくなる
設備資金の貸し付けの際によく利用される。
➁ 返済については、元金均等が原則であるため、はじめのうちは返
済額の総額が大きくなる。
➂ 返済期間が長期になるほど金融機関側の貸し倒れリスクが高まる
ため、その分審査は厳しくなる。
④ 手形割引や手形貸付が無担保無保証であるのに対し、証書貸付で
は有担保または有保証人が一般的。
などがあります。
ちなみに「元金均等」とは、元金部分の総額を返済回数で割ったもの
に利息を加えた額を支払うタイプの返済方法を言います。
そのため、返済は初めは重く(利息分が大きいため)、返済を進める
うちに支払額が減っていきます。
一方、「元利均等」とは、利息を含めた最終回までの支払総額を単純
に支払回数で割るタイプの返済方式で、毎回の支払い額が変わらない
代わりに、元金均等と比べると支払い総額が大きくなります。
なお、証書貸付で返済ができなくなった場合には、その融資が信用保
証協会の保証付きである場合には代位弁済の請求が、担保や保証人を
取っている場合には競売や保証人への請求が行われます。
4.当座貸越
当座貸越とは、金融機関と融資申込人との間で貸し出しができる金額
の枠を設け、その枠内で自由に貸したり返したりをすることができる
タイプの貸付方法をいいます。
その主な特徴は
➀ はじめに限度額(これを極度枠という)の契約をしておけば、そ
の枠内での借り入れならば、その都度、契約をする必要かない。
➁ 枠の範囲内であれば自由に出し入れができるため、金融機関のリ
スクが高くなる。そのため、利用にあたってはかなり厳しい審査
がある。
④ 証書貸付に比べて、金利が高くなる。
などがあります。
以上4つの貸し出し方法が一般的なものとなり、申込人はその特徴や
利便性に応じて融資を利用することになります。
したがって、コンサルをする側もこれらの特徴を把握しておくのは当
然ですが、決算書に表示されている貸付金の種類などから、その企業
がどのような融資を使っていて、どのような借り入れ状況にあるのか
といった点についても推測できる能力が求められます。
次回は、「資金使途から見た場合の融資」についてご説明します。
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