行政書士のための融資講座(その11 保証人)
皆さん、通常の融資制度は「担保・保証人あり」が原則だということ
をご存知でしょうか?
最近では、新創業融資制度などの浸透で「無担保・無保証人」が当た
り前になっていますが、それでもやはり融資は「担保・保証人ありき」
という部分は変わっていませんでした。
しかし、最近になってこの動きに大きな変化がありました。
それは「保証人に関する政令の変更」です。
これにより、今後、保証人に対する金融機関の対応が大きく変わる
こととなりました。
そこで今回は、「保証人制度がどのように変わったのか?」について
お話ししたいと思います。
保証人に関する制度の変遷
保証人とは、債務者が債務の履行ができなくなった場合に、本人に
代わってその義務を履行をする責任を負った人のことを言います。
ギリシャのことわざでは、「保証人となれば破滅は近くにあり」
といわれるほど、この保証人の問題は以前から存在していました。
金融機関でも、以前は融資の際には担保または連帯保証人、
もしくはその両方の徴求を当たり前に行っており、現在でも
その慣習は続いています。
しかしこの保証人問題については、近時、その緩和を求める動き
が顕著となり、それは法律や通達などにも反映されてきました。
まず、民法では平成16年に「包括根保証(個人の保証人に関する
極度額の定めのない 貸金等債務への根保証)の禁止」が規定され、
根保証契約について一定の制限が設けられました。
また、平成18年には、中小企業庁からの通達により、信用保証協会
の「第三者保証人徴求の原則禁止」が実施されました。
これまでは、資力や経営力に不安のある借入人に対する保証には、
経営者以外の第三者による保証人をつけることを求めていました。
しかし、これらの政令の制定によりが、法人の連帯保証人は、
原則として経営者またはこれに準ずる者(過半数株主など)に限定
されることとなりました。
さらに2020年4月からは、以下の改正が行われています。
【対 象】
主たる債務が貸金等の債務であり、かつ保証人が個人であるもの
【概 要】
● 根保証契約は、書面で行わなければ無効。
● あらかじめ保証する金額の上限を契約で定める必要があり、
保証人はその範囲内で保証する。
● 保証人は、契約で定められた5年以内の期間(定めがないとき
は3年間)に発生した債務についてのみ保証。
● 保証人が破産した場合、主債務者または保証人が死亡した場合
には、その後に発生する債務は保証の対象外となる。
● 個人が事業用の融資の保証人になる場合、公証人による保証意
思の確認手続が必要になる。
このように、主たる債務が貸金(融資を含む)等の債務であり、
かつ 保証人が個人であるものについて、極度額を定めていない場合
には契約そのものが無効となることとなりました。
また、この法律では、契約後5年以内(契約の定めがない時は3年
以内)に元本が確定する日(元本確定期日を)を定めるものとされ
ており、この期日が到来したときには、保証人はその期日までに
生じていた債務についてのみ保証をすることになります。
しかし、この中でも最も驚いたのが、最後の
「個人が保証人になる場合に手数料が必要になる」
という規定です。
法人が債務者となる場合には、その代表者はこれまでは当然に連帯
保証人となってきましたが、今後はハンコだけでなく、そのための
手数料もかかるということです。
本来であれば、契約に関する費用は当事者で折半というのが原則
ですが、もちろん金融機関は負担しないので、この手数料はすべて
経営者の負担となることでしょう。
これまでは、連帯保証人は債務者の責任をすべて負うという体制
でしたが、最近ではこように少しずつ変わってきているわけです。
経営者保証に関するガイドラインの成立
こんな状況の中、この流れを後押しするものとして、平成25年12
月に金融庁から「経営者保証に関するガイドライン」が公表され
ました。
このガイドラインは、金融機関と経営者間の融資につき、一定の
条件をクリアーできる場合には、代表者の連帯保証なしで融資を
受けられる可能性があること示したものとなります。
【形式的な要件】
・ 保証契約の主たる債務者が中小企業であること。
・ 保証人が個人であり、かつ主たる債務者である中小企業の経営
者であること。(実質的な経営権を有している者、営業許可名
義人、経営者の配偶者などを含む)
・ 主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、
対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等(負債状況を
含む)について適時適切に開示 していること。
・ 主たる債務者及び保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれ
のないこと
なお、具体的に金融機関から、このガイドラインを適用して経営者
を連帯保証人から外してもらうためには、次のような経営の状況で
あることが必要とされます。
1 法人と経営者との関係が明確に区分・分離できていること。
これは法人の業務、経理、資産所有等に関して、法人と経営者との
間で明確に区分・分離ができていることであり、会社からの経営者
への貸し付けやその逆の行為などが適切な範囲内で行われていなけ
ればなりません。
また、その運用について公認会計士や税理士といった外部専門家に
よる検証がされるのが望ましいとされています。
2 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等により、経営の
透明性を確保すること。
主たる債務者は、資産負債の状況(経営者のものを含む。)、事業
計画や業績見通し及びその進捗状況等に関して、債権者からの情報
開示の要請に対して、 正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・
説明することにより経営の透明性を確保しなければならないとされ
ています。
また、その運用については1と同じく、外部専門家による検証が
されることが望ましいとされています。
上記の内容を具体的な数値目標としてあらわした金融機関も一部には
ありますが、ハードルはかなり高く、上場企業に近い売り上げと利益、
それと管理体制が求められています。
では、この基準をクリアーした場合に、問題なく経営者の個人保証が
外れるかといえばなかなかそういうわけではないようです。
現状では、このガイドライン自体に法的拘束力があるわけではなく、
金融機関としては要件をクリアーしていても必ずこれを認めなければ
ならないわけではありません。
なので、今のところは他行の様子見ということなのでしょう。
しかし、社会の情勢的には、個人保証をなくす方向に向かっているこ
とは間違いないことから、近いうちにこのガイドラインに沿った運用
が行われていくと思われます。
もっと融資や行政書士の仕事について知りたいと思ったあなたは、
ぜひ融資コンサルになるための特別無料レポートを請求して下さい。
なお、特典の無料スカイプ(20分間)orメール相談の回数は1回となります。
関連ブログ
-
行政書士のための融資講座(その10 設備資金)
2020年02月26日
ブログを読む -
調査員は見た!補助金支給の裏側
2018年02月23日
ブログを読む -
「創業融資講座」開催報告
2018年01月31日
ブログを読む -
事業計画作成のツボと、融資額を増やすテクニック【その3】
2017年06月16日
ブログを読む -
こんな会社の設立では融資がでない?
2017年04月10日
ブログを読む