行政書士のための融資講座(その12 担保)

前回のブログでは、「保証人の制度の変遷」や「最近の保証人に関する
政令の変更」についてお話ししました。
今回は保証人と対をなす、「担保」についてお話ししたいと思います。
抵当権と根抵当権の違い
「担保」とは、金融機関からの借り入れをする際に、その融資の返済を
保全するために行われる物件(主に不動産)への担保権の設定をいい、
大抵は抵当権か根抵当権が利用されます。
そのうえでまず、抵当権がどういうものかといえば、
これは一回の貸し出しを保全するために設定される権利となります。
したがって、となっている借入金を返済すれば、抵当権は消滅します。
これに対して、根抵当権とは、銀行取引や手形小切手取引といった
継続して行われる取引により生ずる貸出しを繰り返し担保することの
できる権利となります。
この場合には、当事者の合意かもしくは一定の法律で定められた事由
によらなければ、全額の返済をしたとしても権利は消滅しません。
たとえば、住宅ローンのために自宅に抵当権を設定した場合、その返
済が終われば抵当権は抹消されます。
これに対し、銀行取引のために1,000万円の根抵当権を設定した場合
には、その1,000万円を返済しても、根抵当権は消滅しません。
そして、もしその後に、また1,000万円を借りる場合にはその根抵当権
を再度、利用することができます。
根抵当権の利用価値は、まさにここにあります。
通常の抵当権の場合には、返済が終われば自動的にその権利は消滅
してしまうため、同じ内容の権利の設定をする場合には、また、
同じ手続きをしなければなりせん。
しかし、これでは手間や費用が何度もかかり不経済です。
けれど根抵当権は、1回権利を設定すれば、同種の取引については
その後何度でもそのままその権利を使えるため、経済的ということに
なります。
担保の対象となるものは?
「担保に入れる」といった場合、その対象となるのは、通常は土地
または建物です。
しかし、これ以外にも車や船舶、建設用機械といったものの他、
売掛金(売掛債権担保)や、倉庫などに保管してあって日々数量が
変化するもの(動産譲渡担保)なども担保することができます。
なお、土地とその上の建物がある場合、金融機関ではその両方を
担保にとるのが普通です。
なぜそのようなことをするかといえば、もし、片方だけを担保にと
ると、仮にその土地(または建物)を競売しなければならなくなっ
た場合に残った物件との権利関係がややこしくなるからです。
たとえば、土地とその上の建物があって、その土地だけに抵当権を
設定したとします。
すると、抵当権者が抵当権を実行して、その土地を競売した場合、
残った建物の所有者はその土地に対して「法定地上権」を取得する
ことになります。
しかし、そうなると、抵当権者は土地と一緒に売買ができないだけ
でなく、一般的な賃借権よりも強力な法定地上権が発生してしまう
ため、その後の管理面でも不利となってしまいます。
したがって、金融機関では、このような面倒が生じないよう、
担保を取るときにははじめから土地と建物の両方を担保にとるわけ
です。
なお、不動産なら何でも担保になるかといえば、そういうわけでは
ありません。
一般的な金融機関が担保に取る不動産は、建物、宅地の他では雑
種地程度までであり、農地や山林、遠方の物件などは担保として
敬遠されることがほとんどです。
その理由は、売買するきに農地法の制限が生じたり、管理ができな
いからです。また、建物についても建築基準違反のものについては
担保になりません。
このように、物件があっても担保にできないものもあることに注意
が必要です。
担保の評価について
では、担保を取るときに、どのようにしてその物件の査定をして
いるのでしょうか?
よく私たちが土地や建物の評価を知る場合には、その土地の路線価
を調べたり、近隣の不動産屋に話を聞いたりして目星をつけること
が多いかと思います。
金融機関でも、もちろんこれらの情報は参考にしますが、それだけ
で終わりというずさんな評価はしません。
金融機関が土地または建物の評価をする場合には、必ず現地に行っ
て、その物件を確認します。
そしてそのうえで、その周囲の環境やその物件自体に問題がないか
を調査し、それを評価額に反映させています。
たとえば、
【土 地】
形がいびつでないか、前面道路との接続はどうか?
旗竿地(路地に奥まっており、旗竿のような地形)でないか?
【建 物】
どのくらい老朽しているか?
傾きや基礎部分にひび割れなどないか?
他の住人が住んでいないか?
【環 境】
最寄りの駅からどのくらい離れているか?
近隣に嫌悪施設や設備(ゴミの集積場や墓地など)がないか?
などいう点についても調査をするのが普通です。
そして、もし、これらに該当するものがある場合には、その内容
や程度に応じた加減をし、評価を決定します。
なので、たまに一般の人が路線図の価格だけを見て、「路線価の
価格より評価が低い」と文句を言っていることがありますが、
このような理由から、単純な路線価とは評価が大きく違うことも
あるわけです。
もし、このような場合に、正確な評価を知りたいというのならば
不動産鑑定士に評価を依頼する必要があります。
このように担保の評価はいろいろな調査をして決まるものですが、
だから言って金融機関はその全額について融資をするわけでは
ありません。
通常は、その評価額に約7~8割をかけた金額をもって、最終的な
査定額としています。
この場合の割合いのことを「担保掛目」といいます。
たとえば、土地と建物の評価が1,000万円ならば、これに対して
融資ができる額は1,000万円×70~80%=700~800万円が上限という
ことになります。
ただし、住宅ローンについてはこの掛け目がさらに高いところ
もあって最大100%として見るケースもあるようです。
以上のように、担保は保証人と並んで金融機関の保全の対象と
なるものですが、その内容や違いがわからないと正しく評価も
できないということに気を付けてください。
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