行政書士のための融資講座(その10 設備資金)
前回は「運転資金」についてお話ししましたが、企業が活動するうえで
欠かせないもう一つのものが「設備資金」です。
設備資金は、企業の創業期の導入資金として必要なだけでなく、その後
の経営においても「什器の買い替え」や「内外装工事」などといった場
面で必要となります。
しかし、設備資金は運転資金と対象が異なるだけでなく、融資を返済す
る場合の理屈も違ったものとなります。
今回は「設備資金の特徴」や「正しい借り方と返済方法」についてお話
ししたいと思います。
設備資金の特徴
企業が金融機関から融資を受ける場合には、その資金使途に応じて
「運転資金」と「設備資金」の2つに分類されます。
運転資金は、仕入れや家賃、社員の給与にといった
事業の経費に関する資金です。
しかし、これに対し、設備資金は、什器や車、建物といった、
「その企業が生産力を増大するために必要となる設備類の購入資金」
であるという点に違いがあります。
このように設備資金は、その使い方や返済の仕方についても
運転資金とは異なるポイントがあります。
設備資金はその設備の生産性に着目して計画を作る。
運転資金を借りた場合、その返済の財源となるのは
売り上げを回収した代金です。
しかし、設備資金の場合の返済財源となるものは、
その設備が稼働して生産力が増加したことによる利益です。
たとえば、売り値が@1,000円で利益が200円/個の商品を
50個作れる機械があるとします。
この設備を新しくして、同じ商品が80個作れるようになるとした場合
(80―50)個 × 200円 = 6,000円
の利益の増加が見込めるようになります。
これが設備資金の場合の返済原資の一部となります。
したがって、設備資金の返済の事業計画書を作るときには、
運転資金の場合のように〇ケ月後の入金を当てにするのではなく、
「それにより生産能力がどれだけ向上するか?」
ということに着目して作成する必要があります。
設備資金の返済期間は減価償却期間内に収める。
設備資金の融資は、その設備が存在して稼働できるということを前提
に行われますから、当然、その融資期間もその設備が使える期間まで
というのが原則です。
しかし、通常、その設備がいつまで使えるのかは
実際に使ってみなければわかりません。
なので、一般的にはその設備ごとに法律で定められた期間をもって
これを算定します。
この期間のことを「法定償却期間」といいます。
また、設備資金を返済する場合の具体的な返済原資は
「 減価償却費 + 税引き後利益 」
ということになります。
したがって、たとえば、ある会社が機械を購入した場合
購入代金が1,600万円 法定償却期間が5年 税引き後利益200万円
だったとします。
この場合の返済原資の算定は先の式によると
(1,600万円/5年)+200万円 = 520万円
が理想の返済の形ということになります。
しかし、もし、これを7年で返済するとすれば最後の2年については
減価償却費がないので、会社の税引き後利益のみから返済しなければ
ならなくなります。
この場合の返済額は
(1,600万円/7年)+200万円 = 428万円となりますが、
6、7年目については、減価償却分の228万円がなくなるので、6,7年目
は税引き後利益の200万円では不足することになってしまいます。
このように設備資金の名目で借入れをする場合には、
その設備の償却期間にあわせた返済計画が重要ということになります。
返済期間は、他の融資を含めて10年以内に収める。
先の例では、設備資金の返済期間は
その設備の法定償却期間以内の期間にすると説明しました。
しかし、これはその設備に関する借入れしかない場合の話であって、
もし、これ以外にも借り入れがある場合には、
「どのくらいの期間で返済すればよいのだろう?」
という問題が生じます。
このような場合の返済期間は通常、「10年以内まで」にすべき
とされています。
まず、複数の借り入れがある場合、その返済は会社の税引き後利益と
減価償却額の合計が返済できる限度となります。
この「税引き後利益+減価償却額」を「償却前利益」といいます。
そして、この償却前利益を使って返済まで何年かかるかについては、
次の式を使って計算するすることができます
総借入額-経常運転資金 / (税引き後利益+減価償却額)
※ 経常運転資金
売掛金+受取手形+割引手形+在庫-買掛金-支払手形
この総借入額の中には、既存の借入額と新規に借りる予定の
額(手形割引をしていればその額も)を入れます。
なお、上の式でなぜ、経常運転資金を引くのかといえば、
それは経常運転資金とは常にその企業にあって営業をするために
欠かせない資金からです。
つまり、実質的に資本金に準じたものというわけです。
したがって、たとえば
・ 既存の借入金 1,500万円、
・ 今回の設備購入のための借入金 2,500万円、
・ 経常運転資金 500万円
・ その期の会社の償却前利益 500万円
だとした場合、融資総額についての返済期間は
(4,000万円-500万円)/500万円=7年
ということになり、10年以内に収まることになります。
しかし、これが会社の償却前利益が300万円という場合ならば、
約12年となり10年を超えてしまうことになります。
なので、もしこれを10年以内の額に収めるのであれば、
この場合の適正な借入額は
(1,500万円+2,000万円-500万円)万円/300万円=10年
であるため2,000万円までの借入れが限度という計算ができます。
設備資金を利用する場合の注意点
設備資金には以上のような性格がありますが、
返済だけでなく利用する場合にも注意が必要です。
たとえば、設備資金の名目で融資を受けたにも関わらず、
これを運転資金として使ってしまう方がたまにいます。
本人は軽い気持ちでしてしまっているのでしょうが、
金融機関からみればこれは重大な契約違反となります。
このようなケースでは、金融機関によっては、
その設備資金の返済を求めてくることもあります。
なお、設備資金の融資をした場合に、その資金を借入人の通帳に
入金後、すぐに業者に振り込むということをしている金融機関も
少なくありません。
なぜこのようなことをするかといえば、
中には、業者からあえて高い見積もりをとって、それを設備金額
として申込み、後から業者に返金させるということをする人もい
るため、その防止策としてこのようなことを行っているわけです。
以上のように設備資金には、単に設備を購入する資金というだけ
でなく、独特な返済の考え方があるということにご注意ください。
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